【コラム】療法食について
今回は療法食について解説いたします。
療法食は健康に良いわけではない
療法食は健康に良いフードではありません。病気がある動物に仕方なく食べさせるフードです。大半の療法食は栄養が偏っていますので、病気がない動物に食べさせると健康を害するおそれがあります。
余計なお金を使ってしかも健康に悪いというのは何も良いことがありませんので、病気がない動物には療法食を食べさせないようにしてください。
万能な療法食はない
どの病気にも適した万能な療法食はありません。タンパク質を減らすと脂肪と炭水化物が増え、脂肪を減らすとタンパク質と炭水化物が増えます。あちらを立てればこちらが立たずという感じです。
病気の例を挙げると、腎臓病は低タンパク質、膵炎(犬)は低脂肪、糖尿病は低炭水化物が適しています。異なる病気用の療法食を選ぶと逆効果になってしまいます。
複数の病気を併発している場合は、どの病気の管理を優先するかを考え、妥協してフードを選びます。
療法食の間違った使い方
飼い主さんの自己判断や、獣医師の知識不足などによって、以下のような間違った使い方をされている事例がみられます。
①腎臓が悪くないのに腎臓病用療法食を食べさせる「先代の猫が腎臓病で亡くなったから」「猫は腎臓病になりやすいと友達が言っていたから」などの理由で腎臓病用療法食を食べさせる方がいらっしゃいます。腎臓病用療法食は低タンパク食ですので、明らかに健康には悪いです。言い換えると、タンパク質を摂らずに炭水化物と脂肪を多く摂ることになります。そう言われれば健康に悪そうなことが理解できるでしょうか。残念ながら腎臓病の予防効果もありませんので、すでに腎臓病に罹患している場合以外は使わないようにしてください。
②腎臓病用と尿石用(下部尿路用)の違いを理解していない
大雑把に言うと、腎臓病用は「タンパク質およびリンを制限したフード」、尿石用(下部尿路用)は「膀胱結石ができにくい栄養組成のフード」です。全く異なるものなのですが、理解している飼い主さんはほぼいらっしゃいません。尿に関係するからだいたい同じだろうと思われているようです。自分で選んで購入している場合は間違えないように注意してください。
③必要ない尿石用療法食を食べさせる
尿検査で結晶がみられるだけであれば治療対象にはなりません。また、採取してから時間が経った尿で検査をすると結晶が増えてしまいます。これらを理解していない獣医師によって過剰診断をされて、必要ない尿石用療法食を食べさせられている事例はとても多いようです。
④尿石用療法食の種類を理解していない
尿石には主に「ストルバイト」「シュウ酸カルシウム」の2種類があり、そのどちらなのかによって治療方針が変わってきます。また、ストルバイトの場合は溶解目的か予防目的かによって選ぶ療法食が変わってきます。
そのため、「ストルバイトを溶解させたいのに予防用療法食を使っているため溶解しない」「シュウ酸カルシウムを予防したいのにストルバイト用を使っているため逆効果」などの間違いが生じます。
また、「下部尿路の健康維持」「ストルバイトに配慮」などと記載されている紛らわしい総合栄養食も存在します。これらは療法食ではありませんので、治療効果は小さいです。獣医師が療法食の継続を指示していても、飼い主さんが「それっぽいことが書いてあるし安いからこれでいいだろう」と考えて、勝手に変更して再発する事例はよくみられます。また、ストルバイトには配慮されているものの逆にシュウ酸カルシウムができやすくなるといったフードもありますので、安易に選ばないほうがよいでしょう。
⑤消化器用療法食の種類を理解していない
消化器用療法食には「高消化性」「低脂肪」「高繊維」など、様々な種類があります。また、それらに加えて「アレルギー用療法食」を使う場合もあります。
このあたりの使い分けは飼い主さんに説明しても理解できないでしょうし、何なら一部の獣医師も理解できていないと思われます。飼い主さんが自分で選んで買っているとどこかの段階で間違えてしまう可能性がありますので、病院で買うほうが無難なのではないかという気がいたします。
⑥アレルギー用療法食の使い方が間違っている
アレルギー用療法食を使う場合は、基本的にそれだけを食べさせなければいけません。他のフードと混ぜたりおやつを食べさせたりすると、治療効果がなくなります。
アレルギー用療法食は、効くかどうかの予測が難しいです。たくさん種類がありますが、どれが良いということもなく、やってみなければわかりません。一種類目は効かなくても別のものに変えたら効くという場合もありますし、あるいはどれを使っても効かないという場合もあります。試験的治療になりますので、診察によって効果判定をしながら継続したり変更したりする必要があります。診察を受けずに使い続けるのは無意味な治療となってしまう可能性が高いです。
余談ですが、アレルギー検査というものも存在します。ただ、これは高額且つ使いこなすのが難しいです。当院では現在一切行っておりません。他院で行った検査結果を持ってくる方はいらっしゃいますが、それが有効活用されているケースはほぼ見たことがありません。むしろ、「昔1回検査をして鶏肉アレルギーと言われました」など、不確かな結果を一生引きずって食べるものを限定してしまうという不幸な結果になっているケースもみられます。
アレルギー検査は必須ではなく、療法食による試験的治療で問題はありません。もしアレルギー検査を行うのであれば、獣医師はしっかり勉強してから責任持ってやっていただきたいです。結果を説明できないのであればやるべきではないと個人的には考えております。
さらに余談として、「グレインフリーフード」というものがありますが、これはアレルギー用療法食ではありません。一般的に動物病院では使いません。
⑦肝臓病用療法食を食べさせる
肝臓病用療法食は、「肝機能が重度に低下している場合」「銅の摂取制限が必要な場合」などの、ごく一部の重篤な肝臓病において適応となるフードです。腎臓病用療法食と同様にかなり栄養が偏っています。
「肝酵素値が高いから肝臓病用療法食を食べさせよう」なんてことをやると、大半のケースで逆効果となります。自己判断で間違える飼い主さんが多いです。
以上のように間違った療法食を食べさせてもすぐに体調が悪くなるわけではありませんので、間違いには気付きません。時間が経ってから後悔することになります。療法食は飼い主さんが自己判断で使うものではなく、動物病院での治療の一環として使うものであるということをご理解ください。
獣医師による状態確認の必要性
療法食は、動物の状態を獣医師に確認してもらいながら使うのが基本です。「効果がなければ変更」「病気が治れば中止」「別の病気になれば中止や変更」などの判断が必要となるからです。
「腎臓病や心臓病になっているのに昔勧められた尿石用療法食を使い続けて逆効果になる」「皮膚病でアレルギー用療法食を勧められて効いていないことに気付かず食べさせ続ける」「肥満だったので減量用療法食を勧められて高齢や病気などでガリガリに痩せてきたのに食べさせ続ける」「病院で勧められた療法食を買っているつもりだったが実は違う製品と間違えていた」などの事例もみられます。
これらのようなことが判明した場合は、スルーするわけにもいきませんので説明はいたします。しかし、多くの方は説明を理解できずにそのまま継続されるようです。
病院の責任か自己責任か
「先生に勧められたとおりのものをネットで買って続けています」と言ってくる方は多いです。5年ぶりに来院してそのように言われたりもします。
過去の診察時に療法食を勧めたとしても、その後に動物の状態は変わっていきます。病院以外で購入している場合は動物の状態を把握できませんし、そもそも療法食を続けているかどうかすら把握できません。病院が責任を負い続ける道理はないと思います。自己責任です。
なお、近年はかかりつけ病院を登録しないとネット購入できない療法食も増えています。ただ、購入は勝手にできますし、病院側もわざわざチェックして連絡したりはしませんから、あまり意味のないシステムとなっております。
療法食の値上がりについて
療法食は10年前くらいから値上がりし続けています。それでも必要性があれば使わなければいけませんが、上述のように無意味または逆効果な治療となっているケースも多いようです。目先の安さを優先して自己判断でネット購入するよりも、病院に相談しながら必要なものだけを使うほうが節約につながると考えられます。
まあ、とはいえ、さほど必要ないと思われる療法食を強く勧める病院も多いようです。飼い主さんが満足すればそれでよいという考え方もあるようですが、当院では費用負担軽減を重視しておりますので、必要性が高い場合のみ勧めるようにしております。価格も10%offくらいで販売しておりますので、指導・相談の上で病院で買うことをお勧めしております。
