【コラム】犬と猫のフィラリア予防
犬のフィラリア予防
東京はフィラリアの数が少ないため、予防しなくても感染しにくいということは言えます。ただ、平井でどの程度の感染リスクがあるのかは正直わかりません。もし感染してしまうと治療は困難で取り返しがつきませんし、予防薬は比較的安価でありますし、東京23区内とはいえほぼ千葉みたいなものですから、なるべく予防したほうがよいとは思っております。また、田舎に行くと容易に感染しますので、遠くに出かける犬は必ず予防したほうがよいとも思っております。
予防期間に関しては、遅くとも6月中旬から開始し、11月下旬まで続けることを推奨しております。通年投与は個人的には不要と考えており、推奨しておりません。
フィラリア予防薬は要指示薬なのでネット通販では絶対に買えません。病院で処方する場合も必ず診察が必要となります。ネット通販っぽいのは海外薬の輸入代行です。たまに「海外製買ったんですけど大丈夫でしょうか?」みたいな相談をしてくる方がいらっしゃいますが、法の抜け穴を利用しているわけですから自己責任でやってください。
猫のフィラリア予防
猫もフィラリアを予防したほうがよいという話は近年よく耳にします。販売業者の資料やネットセミナーでは、「抗体陽性率が〜%で東京の室内飼いでも予防しないと危ない」みたいな煽り方をされています。しかし、個人的には東京でそんなに感染リスクが高いわけないだろうと思っております。
個人的な認識としては、「東京の室内飼いでフィラリア持ちの蚊に刺される機会は少なそう」「猫は本来の宿主ではないため犬よりも感染しにくい」「外出する犬ですら感染しなさそうなのに室内猫が感染するとは思えない」「とはいえ万が一感染すると犬よりも危険(咳、嘔吐、突然死など)」といったところです。
予防を推奨するかどうかは悩むところではありますが、いまだに推奨しようという気にはなっておりません。他のことにお金を使ったほうがよいと思っております。「やって悪いことはないんだから勧めりゃいいんだよ業界の足引っ張んなよ」というご意見もあろうかとは思いますが、私は意識が低く商売感覚もないのでそのようなことになっております。
「住居の要因で蚊に刺される機会が多そう」「ノミを予防するのでどうせならフィラリアにも効く薬を使いたい」などの場合は予防するのもよいでしょう。当院で予防されている方も何人かいらっしゃいます。
フィラリア検査について
猫は検査は不要です。犬は6ヶ月齢以上であれば初回投与時に検査が必要です。当院では、1回検査を行って陰性であることを確認し、その後指示通りに予防されている場合は次年度以降は検査を行っておりません。
フィラリア検査というものは、犬の体内に雌のフィラリア成虫が存在するかどうかを調べる検査です。なぜ検査が必要かというと、「成虫が存在する場合はミクロフィラリアという子虫も存在する可能性があり、それを知らずに予防薬を投与すると成虫は死滅しないもののミクロフィラリアが死滅して犬に危害を及ぼすから(最悪なケースでは死亡)」です。
6ヶ月齢未満の犬で検査をしない理由は、「フィラリアが犬の体内で成虫まで成長するのに6ヶ月かかるため、6ヶ月齢未満の犬に成虫は存在しないから」です。
猫で検査をしない理由は、「フィラリアは猫の体内ではうまく成長・繁殖できないため、ミクロフィラリアが多数存在する可能性は皆無だから」です。
犬できちんと予防しているのに毎年検査が必要とされる理由は、「投薬不備(知らないところで吐き出していたなど)、薬の吸収不良、季節外れの蚊に刺された、などの可能性があるから」です。
最後の項目に関して、気温の低い時期はフィラリアが成長しないため蚊に刺されても感染しないものと個人的には認識しております。冬でも都市部の地下では一部の蚊が活動しているようです。その蚊に刺されてフィラリアに感染し得るのか私にはわかりませんが、感染するとしてもとてつもなく低い確率だろうと思われます。投薬不備や吸収不良もあり得るかもしれませんが、それによって感染する確率も(東京においては)とてつもなく低いだろうと思われます。
こういったことは確率の問題であり、絶対はありません。感染リスクや検査コストを総合的に考えた上で、当院ではきちんと予防されている場合は検査を行わないことにしております。毎年検査する病院がほとんどですが、一般的にはそれが正しいです。当院が間違っているだけです。
なお、「通年投与していれば検査は不要」という主張をたまに見かけますが、これは間違いです。通年投与していても投薬不備や吸収不良が生じれば感染し得るわけですから、通年投与と検査の必要性は関係ありません。
フィラリア検査をせずに海外製品を個人輸入している方に余計な忠告をいたしますと、ミルベマイシンという薬はミクロフィラリアが存在する場合に最も危険ですから、ミルベマイシンが入った薬だけはやめたほうがよいと思います。
当院で使用しているフィラリア予防薬
犬モキシハートチュアブル
イベルメック
エビクト
クレデリオプラス
ネクスガードスペクトラ
猫
エビクト
フィラリア予防に関してはどの薬でも確実に効きますので、「剤形(飲む薬または皮膚に付ける薬)」「ノミ・マダニ予防との兼ね合い」などで選択するのがよいかと思います。