平井動物病院|東京都江戸川区|犬・猫

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【コラム】ノミ・マダニ予防について

ノミの危険性

ノミは基本的には痒いだけです。ただし、ひどい皮膚炎になることがありますし、大量に寄生すると貧血になって命に関わることもあります。また、家の中で繁殖すると駆除するのがとても大変です。

 

マダニの危険性

マダニは痒いというよりも病原体(特にSFTSウイルス)の媒介という点において危険です。SFTSウイルスは動物だけでなく人にも感染し、死亡事例も多数あります。東京にはまだ拡がってきてはいませんが、今後どうなるかはわかりません。もし拡がってきたら、野良猫や外飼いの犬猫に触るのは命懸けになります。

 

ノミとマダニの生息場所

ノミとマダニは屋外に生息しています。一般的には、ノミ寄生の事例が圧倒的に多いです。外飼いの犬猫は予防しないとほぼ間違いなくノミが寄生します。室内飼いの犬も散歩に出ればいつでも寄生する可能性があります。

マダニは事例としてはノミよりも少ないですが、東京でも珍しくはありません。草むらに生息しているイメージですが、実際には土手や街路樹など、どこにでもいるようです。

 

屋内飼育の猫で予防するかどうか

ノミとマダニは、ふつうは家の中にはいません。ただし、庭があればノミが入ってくる可能性はありますし、外出した際に人の服あるいは犬に付着してノミやマダニが持ち込まれる可能性もあります。また、ネズミなどの動物によって持ち込まれる可能性もあるでしょう。

個人的な見解として、犬および屋外に出る猫はノミ・マダニ予防は必須と考えております。一方で、屋内飼育の猫は予防必須とは考えておりません。前述のように外から入ってくる可能性はあるものの、頻繁に起こることではないと考えております。ただし、「1階で庭がある」「1階でベランダに出る」「家が古い」「過去にノミが入ってきたことがある」などの場合はノミ予防を行ったほうがよいかもしれません。マダニに関しては、もし室内に入ってくるとしたらそれは住居の問題です。猫がいてもいなくても関係ありませんし、猫に予防薬を投与して解決する話でもありません。引っ越すかリフォームするのがよいと思います。

 

予防薬の選択について

予防薬という言葉はわかりづらいですが、「すでに寄生している虫を死滅させ、その後一定期間(基本的に1ヶ月)は血中や皮膚に薬が残存し、新たに寄生しようとした虫も死滅させる」という薬です(ややこしい話ですがフィラリア予防薬の機序はまた異なります)。「剤形(飲む薬または皮膚に付ける薬)」「効きの強さ」「フィラリア予防との兼ね合い」などを判断基準として選択します。

ノミとマダニの予防薬は基本的には同じ薬であり、両方に効きます。ただし、マダニのほうが薬が効きにくいので、マダニを確実に予防したい場合は強めの薬を使ったほうがよいでしょう。また、ノミに対しても、昔から使われている薬は効きが悪くなっていることを個人的には実感しております。

以上を踏まえ、当院では以下のようにお勧めしております。
・室内飼いの犬であまり外出せずノミ・マダニ寄生リスクがさほど高くない
・室内飼いまたはたまに外出する猫でノミは付いたことがない
  ⇒どの薬でもよい
   効きが悪ければ変更

・室内飼いの犬でよく外出しノミ・マダニ寄生リスクが高い
・室内飼いの猫でノミが発生しているまたは前年に発生していた
・外出する猫でよくノミが付く
・外飼いの犬
  ⇒強めの薬を推奨
 

強めの薬というのは、2010年代以降に上市された飲むタイプの薬のことです(猫用は皮膚に付ける薬)。似たような薬が数社から販売されています。効果が強いからといって副作用があるわけでもなく安全に使用可能です。

これらの薬も将来的には効きが悪くなっていくでしょうから温存したい気持ちもあるのですが、私だけそんなことを考えていても意味がないですし、効きが悪くなったとしても抗菌薬耐性みたいな悲惨なことにはならないでしょうから、気にしないことにしました。私もよく処方しております。

 

予防時期について

経験上、当院の地域ではノミは3〜11月頃に活動し、急増してくるのは5月以降と思われます。

マダニに関しては、経験が少ないためよくわかりません。活発に活動するのはノミと同じ時期と思われますが、真冬でも寄生事例の報告が少なからずあるようです。

以上から、ノミをメインに予防するなら4〜10月の投薬、マダニを確実に予防するなら1年中の投薬が必要となります。

個人的には、現状ではノミ予防メインで4〜10月の投薬を推奨しております。マダニ対策で強めの薬を通年投与するのに越したことはないのですが、マダニは年1回くらいしか見ませんし痛い目にあった経験もありませんので、現状はそこまでは勧めておりません。ただ、怖いことは怖いですから、マダニが心配でお金の余裕もある方は通年投与するのもよいと思います。

なお、過去に生活圏内でマダニが付いたことがある犬に関しては、同じ場所でまた付くリスクがあるものと考えられます。また、草むら、山、森林などに入る犬もリスクが高いと考えられます。それらのケースでは通年投与のほうがよいかもしれません。

 

当院で使っている薬

・マイフリーガード
皮膚に付けるフィプロニル製剤です。ノミは2ヶ月、マダニは1ヶ月予防効果が持続するということに一応なっています。

・エビクト
皮膚に付けるセラメクチン製剤です。ノミ、フィラリア、ミミダニ、疥癬、回虫など様々な寄生虫に効きます。ただし、マダニ予防の効能は承認されておらず、効くかどうかはわかりません。多少効く可能性もありますが、期待しないほうがよいでしょう。経験上、ノミに対してはかなりよく効きます。
マダニを確実に予防したい場合はこの薬は使えませんが、一剤でフィラリア予防までできますので、「フィラリアとノミをメインで予防したい」「薬を飲ませるのが困難」などの場合に適した薬だと思います。当院では保護猫や野良猫に対して使うことも多いです。

・クレデリオ、ネクスガード(犬)
犬用のイソオキサゾリン系の飲むタイプの薬です。ノミとマダニに対してよく効きます。他に、当院では使っておりませんが「シンパリカ」「ブラベクト」という類似した製品もあります。
どの製品も味がついており、大体の犬は自ら食べるのですが、食べない犬もいます。食べない場合はフードやおやつと一緒に食べさせたり、口の中に放り込んだりします。それも無理であれば皮膚に付ける薬(エビクト)への変更をお勧めしております。
フィラリアも同時に予防できる「クレデリオプラス」「ネクスガードスペクトラ」という製品もあり、当院ではそれらを使っている方が多いです。

・ブラベクト(猫)
猫用の皮膚に付けるタイプのノミ・マダニ予防薬です。3か月間効果が持続します。
当院ではなるべく使わないようにしておりますが、「他の薬が効かない」「家の中でノミが繁殖している」などの場合には使っております。
2025年03月15日 21:02

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